2025/09/11 09:45
スペインワインの代表格といえば、まず名が挙がるのがリオハ(Rioja)。
グラン・レセルバといった格付けや、長期熟成を経た複雑な味わいに、ワイン通なら一度は惹かれた経験があるかもしれません。
でも、スペインワインの奥深さは“リオハで止まらない”のです。
それを教えてくれるのが、プリオラート(Priorat)という名の産地。
では、高級リオハとプリオラート。
何がどう違うのか?今日はその違いを、味・歴史・土地・造り手の哲学から掘り下げてみましょう。
(🍷 1.味わいのスタイルが違う)
リオハの高級ワインは、なめらかなタンニン、熟した果実、バニラやスパイスの香り。
長期熟成を経てまろやかに調和した味わいが特徴です。
ボルドースタイルに近い、洗練された“貴族的な赤”。
一方プリオラートはというと——第一印象は、圧倒的な密度感と鉱物的な重厚さ。
果実の凝縮感が力強く、ブラックチェリーやプラム、シナモン、黒鉛、火打石のようなニュアンスまで顔を出します。
つまりリオハが「優雅に語りかけるワイン」だとすれば、プリオラートは「沈黙の中で圧倒的な存在感を放つワイン」なのです。
(🏞 2.土地(テロワール)が違う)
リオハは、広大で比較的なだらかな丘陵地帯。
土壌も粘土質や石灰質、比較的肥沃で生産効率も高めです。
プリオラートは、まるで逆。切り立った山岳地に広がる急斜面の畑。
ブドウ畑はまさに崖のような傾斜にあり、土壌は“リコレリャ”と呼ばれる黒い粘板岩と石英の混じる硬質な岩盤。
このリコレリャこそが、プリオラートに唯一無二のミネラル感と張り詰めたエネルギーを与えているのです。
根は岩盤の割れ目を探して20メートル以上も伸び、まさに「大地を噛みしめるように」育つブドウ。
(🧑🌾 3.造り手の哲学が違う)
リオハはD.O.Ca(特選原産地呼称)として早くから整備され、規模の大きなワイナリーが多く、品質と安定性において非常に優秀。
一方で、マーケットを意識した“国際的スタイル”への傾倒も進んでいます。
一方プリオラートは、同じD.O.Caでありながら、造り手の多くが“個の表現”を追求しています。
大量生産はせず、畑も家族単位の超小規模。
彼らにとってワイン造りは「土地と生きること」であり、「自分の人生そのもの」。
そのため、プリオラートのワインは造り手ごとの個性が強く、一本一本に物語があります。
(📌 まとめ:プリオラートは、リオハの“次”に飲みたいワイン)
リオハを知っている方にこそ、「プリオラートを飲むとスペインワインの見え方が変わった」と驚かれることが多いのです。
土地の厳しさ、造り手の生き方、そしてグラスに広がる強さと深さ。
プリオラートのワインには、“力強い沈黙”のような感動があります。